2019-10-02 神戸の喫茶店にて“神様”と出会った 街が秋色に染まっていく日。 喫茶室の丸テーブルを、中年の男女が囲んでいた。 聖書、仏教、人生、健康、 目を輝かせた男性の口から聞こえてくるのは、大それた言葉たち。 俺は勉強しているんだ、誰よりも賢いんだ。 そんなヒトとしての当たり前の顕示欲のようなものが、空気を少しずつ蝕んでいるよう。 しゃれたコーヒーカップに赤い夕陽が差し込む。 微笑んで女性はうなずくばかりだったが、 「もう行こうか、寒くなったね」とぽつりと言って、コートに手をやった。 その時、男の高尚な哲学は空中をへなへなと舞い、しぼんで床下にあっけなく落ちてしまったのが、僕には見えた。 男がエセ神学者なら、女は神のようなものかもしれないと思った。 (神戸・三宮にて。)