四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

神戸の喫茶店にて“神様”と出会った

 
街が秋色に染まっていく日。
喫茶室の丸テーブルを、中年の男女が囲んでいた。
 
聖書、仏教、人生、健康、
目を輝かせた男性の口から聞こえてくるのは、大それた言葉たち。
俺は勉強しているんだ、誰よりも賢いんだ。
そんなヒトとしての当たり前の顕示欲のようなものが、空気を少しずつ蝕んでいるよう。
 
しゃれたコーヒーカップに赤い夕陽が差し込む。
 
微笑んで女性はうなずくばかりだったが、
「もう行こうか、寒くなったね」とぽつりと言って、コートに手をやった。
 
その時、男の高尚な哲学は空中をへなへなと舞い、しぼんで床下にあっけなく落ちてしまったのが、僕には見えた。
 
男がエセ神学者なら、女は神のようなものかもしれないと思った。
 
(神戸・三宮にて。)
 

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