四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

初めての上海

夜明けの上海

僕には初めての上海です。一週間ほど上海に来ていました。 仕事を探すためです。これまで1年半暮らしていた辺境の地、雲南省昆明市内を離れ、この都市へ来ることに決めたのです。中国という国をみつめるためにも、経済の発展が著しいこの町をみてみる必要があると感じたのも確かです。

先日、暇な時間をみつけて、宿の近くにある劇場へ京劇を観に行きました。京劇は中国を代表する伝統的な芸能で、日本の歌舞伎なんかに当たるのかもしれません。

 京劇に誘ってくれたのは、いまは日本の京都に暮らしているという中国人女性の華さん。日本での生活は10年というから、日本語はほとんどネイティブレベル。とても知性を感じさせる方です。同じ宿になった縁で、いっしょにさせてもらいました。

 劇場は日本では小さな田舎町の公民館といった感じのこじんまりとした場所。ですが、所々に観客がくつろげる配慮が、席の硬さや角度、照明など細部に感じられて、ほっと安らげます。料金も30元とかなり良心的です。

 2つの演目がありました。役者はすべて中国語で話します。中国語を1年半勉強した私でも、京劇の言葉はあまり聞き取ることができません。それで華さんがポイントを押さえてストーリーを通訳してくれました。勧善懲悪の世界もあり、恋沙汰の人情ものもありました。おかげで、笑いところ、感動ところのツボがすらりと分かりました。

 最後は幕が下ります。地元上海の古い観客たちは、拍手を送りました。しかも舞台袖まで詰め掛けての熱い拍手です。「ヨッ」なんて掛け声をかけている人もたくさんいます。それで、幕が何度も開いたり閉じたりしていました。

 少し感動しました。観客は、感動を受けたものには惜しみなく拍手を送る。演じる人間も、それを観る人間も最大に楽しむ方法がそれ。演劇の楽しみ方を知っている人たちがここ上海にいることが、うれいと思いました。

 上海人はなかなか粋じゃないですか。やっぱり歴史ある都会だからなのでしょうか。ここで暮らしてみるのも悪くないと思いました。