四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

2007-01-01から1年間の記事一覧

シンプル・プリンシパル

「もっと物事ってシンプルなんじゃないかと思ってるんです」 と、彼はうつむき加減に言った。 自信がないんじゃない。ちょっと細めの目がさらに細くなって、楽しくて笑っているかのよう。 「吹っ切れた」、と表現したら言い過ぎだろう。人が何かから吹っ切る…

ラン、ラン、ラン

完走しました。 先週末、11月25日に開催された東レ杯上海国際マラソン。 僕が参加したのは、ハーフマラソンの21キロ。 過去最大の1万8000人が参加したとか。左足のひざが痛くて途中で棄権しようと思っていたのに、大会の雰囲気に飲まれるようにして走ってし…

右手の薬指

深夜、携帯電話が鳴った。 いつまでも繋いでおきたくて。 長い間、僕らは話した。 ときどきため息をつくあなたの声を聞きながら、 僕はもう二度と爪の生えてこない自分の右手の薬指をみつめていた。 古傷、 僕の右手薬指にある深い傷。 事故当時、周りを取り…

僕らの平均年収

先日、中国の大学で講義をする機会があった。 日本語を専攻する40人ほどの学生たち。上海からやってきた日本人がいったい何を話すのかと興味津々の眼差しを浴びる中、僕は黒板に大きく「格差社会」と書いた。 まず、日本の平均サラリーマンの平均年収がだい…

寛容な世界

なにかの禁止マークが立ってるけど、 もっと好きにやっていいんじゃない。 だって、こんなに綺麗な青空が広がってるわけだし。 彼女は空を見上げながら気だるく話した。 そもそも、そんなに自分をつまらない枠の中でがんじがらめにする必要がどこにある? 自…

僕の特別な人

週末、ひとりで上海の街角に立ち、道行くひとびとを眺めていた。ある人との待ち合わせのために、空いた15分ぐらい時間だった。 楽しそうに笑顔で話しながら通り過ぎてゆく二人の女の子、デート中の若い男女、足の悪そうなおばあさんを支えて歩く男性、きれい…

ビリから3番目。

ビリじゃない。けど、いつもビリから3番目だった。 小学生の時。背の低い順に整列させられた。学校の先生なんて、ひどいことをする。2月10日の早生まれ。みんなより発達の遅れた僕は、前から3番目だった。 横の女の子の列を見れば、僕より背の低い子は…

すべて故障なり

故障その1.洗濯機が回らない。だから最近はもっぱら手洗い。おかげで手の皮がずりむけた。故障その2.テレビは、ザザーと白黒の縞模様のみ。だから最近はテレビは“没看”。おかげでYouTubeでダウンタウンを観る日々。故障その3.シャワーのお湯はヤケドし…

引越しの決め手

声は、人をよく表す。 部屋から聞こえてきた女性の声を聞いて、僕は期待した。 まだ見ぬ女性はきっと美女に違いないと、僕は期待したのだ。 と、書いてあっても何のことやら分からないだろう。 その前に、上海に来て初めて、違うアパートへ引っ越すことにな…

白い肩、動く腰

薄い着物を上から脱げば、 女の白い肩が覗く。 そのまま光の中で踊り続ける女の首すじの妖艶な白さをみつめていると、喉が極度に渇いて次々と飲めないビールを流し込んでまう。いっそのこともっと激しく、もっと強く世界は破滅すればいい。 中国人の若者たち…

夢から醒めないのは地球温暖化のせい

若者たちでごった返す休日の街角で、僕らは別れた。 互いに背中を向けて歩き出して10メートルほど離れた時、彼女がどんな姿で帰っていくのかを確かめたくなり、僕は振り返ってみた。 彼女も同じタイミングで振り向いたらしく、距離がどんどんと離れていく人…

上海で自分だけのオーダーメイド革靴の楽しみ

生まれてはじめて、自分だけのオーダーメイドの靴を作った。 作ってもらったのは、僕が時々会社の帰り道に立ち寄っていた靴屋さんだ。 靴職人の曹志高さん、46歳。 上海の離島、崇明島で生まれた。16歳の頃、おふくろさんが若くして癌で死ぬと、すぐ働きに上…

可愛い隣席の女性

「あなたにこれをあげます」と、真顔のまま彼女は言った。 彼女が示していたのは、彼女の左手首に巻かれた腕輪。 「人からもらったもの。でも気にしないで。ぜひもらってください」という。 先々週の日曜日、私は、上海の近郊にある水郷の里として有名な「周…

永遠に生きよう

自爆テロ。 パレスチナでは、「ジハード」(聖戦)と呼び、18歳の女子学生や結婚を控えた28歳の女性までもが自爆テロへと向かう。爆弾を腰に巻きつけ、人々でごった返すバス内で自らの肉体とともに爆破させる。これからという若い人たちがなぜ自ら命を絶とう…

風向き

たった今、風向きが変わった。 右頬を撫でていた風が突然に向きを変え、左頬を打ち始めた。風向きなど意識しない意識が、何かの未来を意識しはじめる。風向きが変わるとき、どこか遠くでそれに対応するものや誰かの変化が起こっているのかもしれない。 今夜…

足元の金魚鉢

昨日の土曜日。ひとり上海の地下鉄2号線に乗って、買い物に出かけた。 人もまばらな車内の座席に腰掛けると、向かいの席に金魚がいた。 息苦しそうに水面から口を出してパクパクとさせている真っ赤な体。僕は、場所に不釣合いな金魚の姿に見入りながら、そ…

途切れるやさしい声

先週、パソコンに向かって、仕事用のつまらない文章を書いていると、背広のポケットに入れてあった携帯電話がプルルと鳴った。 携帯を取り出して着信の名前をみると、遠くで暮らしているある女性から。 社内では私用の電話はできないから、慌ててオフィスか…

ダルフールのジェノサイドと中国との関係

上海の街を歩いていると、黒人をよくみかける。 多くはアフリカ諸国からの国費留学生だ。彼らは、母国へ帰ったらお国を背負って立つようなエリート中のエリート。上海の大学に留学経験のある日本人の友人に聞けば、彼らアフリカ人はどの国の留学生よりも真面…

晴れた日はカメラを持って街へ出よう

夢をみた。 誰も、誰ひとりとして信じてくれなかった。 マチュピチュの石畳の上を歩いた心地よい疲労感のことも、 奄美で聴いた心に染み渡る島唄の旋律も、 宇宙まで広がっているような雲南の高く青い空も、 金を生み出すうす汚れた上海の空気の臭いも、 「…

お前も好色か!?

息子:お父さん、“こうしょく”って何のこと?父:こうしょく?誰からそんな言葉を教わったんだ?(とぼけ)息子:サトウおじさんから。父:で、サトウおじさんが“こうしょく”だって言ったのか?(アノヤロ)息子:そう。内緒だけど、お父さんは“こうしょく”…

上海路上の経済学 価格論

ものやサービスの価値は需要と供給のバランスによって決まる。と、いうことは学校で習った市場経済の基本中の基本だ。 ところが、社会主義市場経済の本拠地・上海では、“客の顔”で値段が決まる。(路上の経済学の法則その壱。これは世界の著名な経済学者は誰…

偏頭痛と上海の赤いリズム

僕は、「生体的なリズム」が崩れると、とたんに偏頭痛がする。ズキズキ、ズキズキ・・・。脈と同じテンポで痛み、キューと血管が細くなっているのが分かる。あまりひどい痛みのときは吐き気すらする。しかも必ず左の側頭部、コメカミの近くが痛む。 人間はリ…