四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

上海で自分だけのオーダーメイド革靴の楽しみ


 生まれてはじめて、自分だけのオーダーメイドの靴を作った。
作ってもらったのは、僕が時々会社の帰り道に立ち寄っていた靴屋さんだ。

 靴職人の曹志高さん、46歳。
 上海の離島、崇明島で生まれた。16歳の頃、おふくろさんが若くして癌で死ぬと、すぐ働きに上海へ渡ってきた。イタリア製の靴を作る工場で長年働き、技術を身につけたという。
 30年間、ずっと上海で皮靴を手作りしている。
 曹さんはおちゃめだ。半年ほど前、僕が近所のDVD屋で海賊版の映画を選んでいると、突然彼ががどこからともなく現れ、店員に「彼は俺の友達だから、安くしてやってくれ」と笑顔で言い添えてさっと立ち去ったこともあった。中国語なんて特別に流暢にしゃべられなくても、中国ではいろんな人とすぐに「朋友」(友達)になれてしまう昔の日本の下町の雰囲気が僕は好きだ。
 少年のような曹さんを支える奥さんは、彼にはもったいないぐらい聡明な印象を与える感じの女性だ。いつも僕を満面の笑顔で迎えてくれる。僕は、彼らのような身近にいる友達の存在が本当にうれしい。

 
 10日ほど前、久しぶりに店に行くと、曹さんは「やあ、今日はどうした?」という。僕も時には客になることを忘れているようだ。
 そういえば、以前から知り合いなのに、彼に靴を作ってもらったことがなかったと気づき、「僕の靴を1足作ってくれないか」と注文した。彼は待ってましたとばかりに目を輝かせた。
 
 
 僕の偏平足な足の幅、長さ、甲の高さ、それから全体の形を測って作っているから、びっくりとするほどに足にぴったりしている。靴底は牛の本皮。サイドもカンガルーの皮だという。自分だけのたったひとつの靴。そう思うだけで、足取りが軽くなるような気がする。実際に軽い。
 靴こそは、本来は自分の足に合わせて作らなければいけないのかもしれない。
 
手作り靴屋さんの住所と連絡先は以下の通り。
<志高皮鞋店> 上海市長寧区虹古路388号(水城路と安龍路の中間) 電話:(021)6242−9381 作ってもらいたい靴の写真などを持っていっても、ほぼ同じ形のものを作ってもらえるので、気軽に相談を。牛皮の底の場合は880元(約1万3000円)、女性は800元(約1万2000円)。