四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

僕の彼女は「綾波レイ」

 仕事を終えて、バス停に向かうと、中国人男性の同僚がそこにいました。オウっと互いにあいさつを交わし、どこへ向かうのかとたずね合います。彼は、友人たちと日本料理店で食事をするとのこと。
 営業部にいる新人の彼とはほとんど話す機会もなかったので、せっかくだからと途中のバスの中でいろいろと話をしました。

 彼は、今年の7月に上海のある大学を卒業したばかりの22歳。大学では「観光日本語」を専攻していたといいます。
 どうして観光日本語を専攻したのかと聞けば、「好きな女の子がいたからだ」となんとも不純な動機。人生の方向まで変えそうな専攻を女の子ために選んだ彼ですが、結局卒業までお目当ての彼女はゲットできなかったよう。「今はいい友達です」と彼は日本語で語ります。切ないね。

 それで、35歳の独身男と22歳の青年の男2人は、自然と女の子の話に突入していきました。

 僕:「どんな女の子が好きなの?」
 彼:「優しい子。日本人の女性は一番いい」
 僕:「それは幻想。どこの国の人だろうと個人それぞれだと思うけど。上海の女の子だって優しい子はいるはずだけど!?」
 彼:「ダメ!」 


 彼は、中国人女性は眼中にないようです。具体的に、2人が共通で知っている若い中国人女性の名前をいくつが挙げてみると、彼は「ダメ!ぜんぜん優しくない」などと首を振ります。
 やっぱり日本人の女の子がいいと頑ななのは、日本語を勉強していたせいかと思いました。それで、僕は「じゃ、どんな日本人がいいの?日本の女優とか歌手とかなら誰が好き?」と質問してみました。すると彼は少し照れながら、

 彼:「エバンゲリオンのアヤナミ・レイみたいな人!!」
 僕:「はぁ・・・・・・誰それ?」


 アヤナミ・レイが、「綾波レイ」という超人気アニメのキャラクターだと僕が初めて知ったのは、家に帰ってから検索したネット上でです。
 中国では、彼のように日本のアニメが大好きな若者は結構多くいます。こうやって好きな女性のタイプと聞かれて、日本アニメの女性キャラクターを思い浮かべてしまうほどです。 
 たぶん彼は「綾波レイ」が好きすぎて、綾波レイが日本人を代表する女性だと思っているんじゃないかと僕は勘ぐりました。


 「綾波レイ=日本人女性の代表=彼女にしたい女性」


 そんな構図の中で思い描く幻想が、はかなく壊れる日はそう遠くないだろうと、おじさんは彼の未来を心配しました。
 ちなみに、アニメやゲームを通じて今の中国の若者と日本の若者は文化的な世界観を共有しているように感じます。むしろ、まったくアナログな僕とデジタルな世界に生きる日本の若者との距離より、中国の若者と日本の若者との距離は国境を越えてぐっと近いのではないか思うほどです。


(※注意:この日記は、僕の好みの女性とか、お見合い話とは何の関係もありません。あしからず)