四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

静かな光の夜に



人は、他人の痛みを感じられる。涙が流せる。

 そんな当たり前のことを、ここ中国でも感じた。



2008年5月12日午後2時28分。
四川省で大きな地震があった。
犠牲者は最終的には7万人を超えるとも言われている。
 まだ多くの人々が瓦礫の下に埋まっている。
 



「全国追悼日」の初日の夜、上海市の人民広場に若者たちが集まった。

地面にロウソクを灯して、犠牲者たちを悼んむ。
深夜12時近く。とても静かな夜だった。
  
  チベット四川大地震、そして五輪・・・中国。  
 時代の分岐点があるとすれば、きっと2008年になるだろう。
  分岐点という濃い空気の中で呼吸しているのを強く感じる。 

  
こちらの新聞やテレビでは、「中国がんばれ」と繰り返す。
確かに悲しいし、痛い。
けれど、災害のドサクサに紛れて、いろんな問題があることを見失わせようとする。そんな意図も見え隠れしていないわけじゃない。
涙に流されてしまったらいけないんだと思う。  
帰り道のタクシーの中、高速で通り過ぎていく夜景を眺めながら、そう思った。
 
 
 行き着けのショットバーに戻った。
ロウソクの光を撮影してきたんだと、従業員の女の子たちと中国語で話していたら、遠くの席いた中国人男性が、僕に一杯のビールをおごってくれた。
彼は遠くから「謝謝(ありがとう)」と言った。
僕もビールを軽く持ち上げて「謝謝」と返した。


    僕は何もしていないし、中国にいるくせに何もできていない。
      が、どこかに痛みだけは感じているのかもしれない。
      
   

       



   とにかく今は、どんな饒舌な言葉よりも、ただ静かで優しい光が欲しい。
    暗闇の中に埋もれて犠牲になった多くの子供たちのためにも。



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※shotbar Velude(ビロード)上海市長寧区新漁東路259号(水城路近く)