すべて故障なり
故障その1.洗濯機が回らない。だから最近はもっぱら手洗い。おかげで手の皮がずりむけた。
故障その2.テレビは、ザザーと白黒の縞模様のみ。だから最近はテレビは“没看”。おかげでYouTubeでダウンタウンを観る日々。
故障その3.シャワーのお湯はヤケドしそうなほどに熱いか、かなり冷たいのしか出ない。だから最近は水ふろ。まだ蒸し暑いのでこれはこれで結構いい。
故障その4.台所の蛍光灯はつかない。だから最近は暗闇。
故障その5.トイレはウ○コが流れない。だから最近は・・・
新居に引っ越してきてもうそろそろ半月。高い家賃を払ってるのに、設備という設備はほぼ故障しているのが分かった。
どれも見学時に一見しただけでは分からず、住んで使ってみて初めて発見できる故障ばかり。
それで、私より若そうな大家にさっそく電話して「修理してくれ」と訴えたら、逆キレされた。
「あんた、何をやっているんだ!」
それはこっちの台詞です。
私は何もしていない。ただ引っ越してきただけ。
逆キレは中国人民の伝統的な戦略か!?
でも、私より若そうな大家は観念したらしく、今週の土曜日の朝、ガスの修理屋、テレビの修理屋、洗濯機の修理屋(兼蛍光灯修理)の職人3人をどっと俺の部屋へ連れてくると約束した。
だが、たぶんこの故障ぶりだとどれも修理できなくて、新品か中古を買う羽目になるだろう。それが分かっていて、逆キレしてみせたのかもしれない。彼には痛い出費になる。
あれ?でも何か足りない。
ウ○コはどうする!!
閑話休題。
どこかへ違う場所へと移動するとき、周りがザワメクような予兆がある。都会の狭い人間関係の中で、小さなことでもイラつく自分らしくない自分に気づいている。昔無くした右手薬指の爪が疼く。
でも以前と違うのは、心の中までザワついていないこと。過去と未来を見通すような透明感の中にある。もうそろそろ、俺は旅に出てもいいのかもしれない。
そうだ、いっそのこともう一度広い空の下で野糞をしたい。そこでは故障したガスも、エアコンも、洗濯機もいらない。
ただノートと鉛筆、そしてカメラがあればいい。