四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

僕らの平均年収

 先日、中国の大学で講義をする機会があった。


 日本語を専攻する40人ほどの学生たち。上海からやってきた日本人がいったい何を話すのかと興味津々の眼差しを浴びる中、僕は黒板に大きく「格差社会」と書いた。

 まず、日本の平均サラリーマンの平均年収がだいたい440万円だということを教えると、「弁護士はどれぐらいだと思いますか?」、「お医者さんは?」という具合に職業別の平均年収がどれくらいになると思うかを学生たちに聞いてみた。
 
 一方的な講義は苦手だ。
 学生たちに講義に参加して欲しかったから、僕のほうから学生たちに質問しまくった。答えなどはあまり重要ではなく、どう考えているのかを口に出してほしかったのだ。
 「そこの男子学生たちはどうですか?」と、教室の後ろの方でかたまっている男子たちにも声をかけてみる。こういう時の肝はかなり据わっていることに、自分でも驚かされる。
 

 大学は、上海と杭州のほぼ中間に位置する小さな街にある。今年9月からこの教壇に立つベテランの日本語教師に、日本のことを話してほしいと頼まれてのことだった。


 ところが、学生たちはかなりいい勘を働かせて、各職業の平均年収を当ててくる。これでは講義に発見がないと焦った。


 最後にとって置いた質問、「フリーターはどうですか?」をぶつけてみた。
 その直前に、農家ですら765万円もあると聞いてしまった後だから、教室内は少しざわついた。互いに相談しあったりして、さすがに想像もつかないようだ。中国では8億人もいるといわれる農民たちは、社会の最下層に位置する。
 「フリーター」がどんな人たちなのか分からずに、さっそく辞書を引き出す生徒たちもいた。


 答えは、秘密。だが、僕の今の年収とあまり変わらないのは確か。


 中国はかなりひどい格差社会だが、日本も負けず劣らずだということを講義のテーマとしたかったのだが、自分自身が“相当”な位置にいることが判明しそうになり、墓穴を掘ってしまった。

 そんなことは抜きにしてちょっと自慢。後日、大学の日本語教師の方からメールが来て、「あれからよくruruchanさんのお話なさったことを話題にし、話が盛り上がります」。「短い時間の講義でしたが、講義は学生たちのどこかをつつき、覚醒させたようです」とあった。
 僕は嬉しくて、わざわざそのメールをプリントして同僚たちにみせたら、「教師の方が合ってたかも!」と言われた。大学での講義の直後、教室を出た僕を追って、質問に来てくれたかわいい女子学生3人の顔が浮かんだ。


閑話休題

 最近、僕は走りに目覚めた。というほど大げさなものではないけれど、来週末に上海市内で開かれる「東レ国際マラソン」に参加する。種目はハーフの21キロメートル!
 1カ月半ほど前から練習をしてきたが、今週は風邪を引いてしまってまったく練習ができていない。
 
 果たして僕は完走できるか? 
 無理しないでビリから3番目でも完走できたらいい。