四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

僕の特別な人

週末、ひとりで上海の街角に立ち、道行くひとびとを眺めていた。ある人との待ち合わせのために、空いた15分ぐらい時間だった。


楽しそうに笑顔で話しながら通り過ぎてゆく二人の女の子、デート中の若い男女、足の悪そうなおばあさんを支えて歩く男性、きれいな金髪の欧米人の家族…週末の街頭をたくさんの人々が目の前を通り過ぎてゆく。この一瞬以外にはもう一生会うことはない人々の群れ、群れ。

彼らが僕の人生に触れたのは、目の前を通り過ぎるまでかかったたった10秒間ぐらい。彼氏、彼女らにもそれぞれのドラマがあり、人生がある。
僕は「さようなら」、「さようなら」と心の中で声をかけてみた。この広すぎる世界では、きっともうあなたたちにはもう二度と会えない。あなたたちが明日死のうが、死ぬまいがどっちでもいい。

上海とのそんな冷たい無関係さが寂しい。
でも、どんなに長く住もうが、この広すぎる世界とのこの無関係さは変わらない。





そんな風に漠然と考えていたら、いつも出会っている人たちのこと、名前を知っている人たちのことが、自分にとっては世界でもかなり特別な人たちなのだという気がしてきた。

そして、これから僕が出会う人々。僕が名前を覚える人たちのこと、そして愛するであろう人のこと。家族のこと。



僕にとって特別な存在とは、これまで僕が出会ってきた人すべて、そしてこれから出会うであろう人々すべてなのかもしれない。そんなことは当たり前だよ、と言われそうだが、自分の感覚として感じることって少ない。
人口1600万人とも言われる上海の街角にあふれた、名前も知らない人々の群れの中で、はっきりと僕は感じた。










あなたに出会うまで、僕はあなたの名前さえ知らないでいた。もっとあなたのことを知りたいと思うのは自然なことなのかもしれない。