四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

インターネットの泡

上海浦東の超高層ビル街

 インターネットは何につながっているんだろう。

 僕が問いたいのは、システムの問題ではありません。インターネットから発信されるその情報は、どんな現実とつながっているのか。どんな人や物とつながっているのか、という疑問です。

 僕もネットが好きです。こうやってブログで日記を書いて楽しんでいるし、最近流行のmixiミクシィ)やGREE(グリー)なんていうコミュニティサイトにも参加して、友人たちと交流しています。仕事上の情報収集もネットを通してやることが多くなりました。

 しかし、ネットで流される情報の多くは、「情報」が「情報」を作り出していることが多いと気づきます。二次情報が三次情報を作り出すのみ。無数の次数の情報が溢れかえる泡世界。実態なき情報が情報を作る。まさしくネットバブルです。「現実」が情報となっているという実感は少ないのです。
 情報の基に、生身の人がいてほしいのです。そして確かな現実。この世界で動いている現実世界とつながっていることを感じられないと、僕は信用しません。

 でも、そんな薄っぺらいと思える情報でも、取引されて、しっかりとお金に化けてしまう。それも驚くような大金に化けています。いつかの日本のように、価値のない土地が投機の目的で何倍にも値上げされ、大金を生み出したバブルとそっくりです。「ネットバブル」も「土地バブル」も根っこはやはり同じなのでしょうか。


 僕のおやじは、精密部品を旋盤でこしらえる町工場の職人です。

 おやじの兄貴は、建築士です。

 おふくろの弟は、大工職人です。

 おやじのおやじ(祖父)は、もうこの世にはいませんが、桶をこしらえる桶職人でした。

 彼らはみんな、金属のキリコや土埃、おがくずにまみれて生きてきた人たちです。自らの手を汚して確かな物を作ってきた人たちです。
 彼ら物を作る人たちが世界の根底にあって僕らを支えてくれていると信じています。農業も同じです。僕たちが食べるものを作ってくれています。

 ネットがなんでしょう。バブルがなんでしょう。なんとかエモンが大金持ちでも僕はまったく尊敬できません。それより、水を一滴もこぼさない桶を木材で手作りしてしまうことのほうがはるかに驚いてしまいます。

 
 僕はこれまでに新聞の記事を書いてきたし、いまでも雑誌を作ったりしています。物はまったく作ってこなかった。いや、作れません。
 だからこそ僕は、物をつくっている人たちを忘れないでいたい。彼ら生身の人間に当たって得ることができる情報だけを伝えていこうと思っています。
 
 

 ところで、いま僕が暮らす中国。IT人口は2億5000万人になるとも言われます。巨大です。これから社会経済の発展とともにどんどん拡大していくでしょう。

 しかし。残る10億余の人はパソコンすら買うことができないという現実があります。
ネットという泡の世界に浮かれるのは勝手ですが、僕はそれよりも現実世界に生きる無数の人々の方にしっかりと目を向けていきたいと考えています。

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