無節操な犬の話(見合い物語完結編)
お見合いのあった日の、デートの様子を詳しく報告せよ!という要望が多いので、改めてここに報告いたします。ではさっそくかの土曜日の昼下がりに戻りましょう。
彼女を一目見てショックを受けた僕ですが、とりあえず食事だけでもと思い、僕は「じゃ、ご飯を食べに行きましょう?何が食べたいですか?」と誘いました。ところが女は「ごめんなさい。もう食べてきちゃった」とおっしゃられました。2発目のパンチです。午後1時なので当然まだ食べてきていないだろうと思ったし、僕は実際食べてこなかったのです。「没問題」と僕は言い、さらに顔をひきつらせました。仕方がないので、「天気もいいし、散歩でもしましょう」と公園へ向かって歩きはじめました。
けっこう歩きました。1キロ?2キロ?歩いても歩いても公園に到着しません。いつもより公園が遠くなっています。心なしか歩く速度がかなり速くなっていたようです。僕はうっすらと汗をかきはじめました。「暑いね」と聞くと、女も「本当!なんでこんなに暑いのかしら?!」と答えました。当たり前です。もうこれは「散歩」じゃなく、「競歩」の一歩手前ですからカロリー消費量はジョギングなみです。
公園に到着してから何を話したのかよく覚えていません。記憶を消したいのでしょうか。記憶しているといえば、女が「中国ってどうして中国って言うんだったけ?」と聞くので、「中華人民共和国を略して中国だよね、アハハ」なんて答える、本当にどうでもいい会話です。少しは雰囲気を和ませなければと思い、お母さんが抱えていた白い犬の話を持ち出しました。デートの場に相応しく、そしてなんと健全な話題でしょうか。
僕「白くてかわいい犬、家で飼ってるんですよね?」
女「そうなの!そういえばあなたもうちの犬に会ったことがあったのよね?」
僕「僕は犬が好き。猫は外でふらふら遊んでくるしね、何食ってるか分からん」
女「私も犬が好き」
僕「やっぱ犬は猫と違って、家族にとても従順でしょ」
女「でも、うちの犬はあなたも知り合いの売店のおばさんが好きなの」
僕「そう・・」
女「うちの犬は、きっと私たち家族のことはぜーんぶ忘れて、誰にもついていっちゃう」
僕「・・・・」
無節操な犬の話でした。ちなみに、その犬ってあなた自身じゃないですよね!?
ということで、これで上海お見合い物語は完結です。あしからず。