四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

雲南の伝統という糸

石林のイ族

 こんばんは。約半月ぶりの日記更新です。

 ゴールデンウィークの丸一週間は、雲南に“帰っ”ていました。行ってくるではなく、帰る。僕にとっては、やはり帰る場所のようです。同僚の女の子2人と、カメラマン1人と合計4人の旅です。僕以外の3人は雲南が初めて。僕がガイド役を務めましたが、頼りなくてごめんなさいね。

 今回は、人と会う旅でした。一週間で20人以上の人たちと会い、話を聞いてきました。昆明時代の友人たちがほとんどでしたが、今回初めて会う人も。

 昆明から、夜行の寝台バスに乗り込み11時間も揺られて、少数民族と棚田で有名な「元陽」へ。

 僕らがみてきたのは、少数民族の刺繍でした。予想はしていましたが、伝統的に精巧な刺繍はもう過去のものになりつつあるということです。ハッとするほど目を引く刺繍はどれも、30年も40年も昔に、いまのお年寄りたちが手間暇をかけて作ったものです。ひとつの服をつくるのに半年や1年という歳月をかけているものも少なくありませんでした。

 改革開放で市場経済化の波は貧しい農村にもやってきて、すぐに現金収入に結びつかないこれらの非効率な刺繍は、時代から切り捨てられました。しかし、ここ最近5年ぐらいの間で、再び伝統的な刺繍はエスニックが好きな海外の人々から注目されるようになりましたがもう遅く、いまの若者たちの間で同じ精巧なものが作れる人はほとんどいませんでした。伝統という糸が切れてしまっていたからです。

 そこで仕方なくパソコンでデザインし、工場で機械縫いして大量生産、土産屋で薄利多売で利益を確保しようとする安っぽい製品があふれているのが、中国の現状なのです。効率性と生産性が至上命題の市場経済は、地域の多様性を失わせていく運命にあるのかもしれません。

 でも、アイデア次第で僕らにも何かができる。そんな予感をつかんできたような気がします。過去の関連日記「雲南ブランドを創造しよう」