四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

神は皺に宿る

 大きく見開かれた右目です。右目の目尻の下。長さ7ミリほどの細い線。彼女の皺に気づいたのは、ちょうど一週間前のことでした。

 昼時。僕らは、ご用達の安い食堂に入りました。ラーメンを食べる彼女の顔をふと見てみたら、いままで目立たなかった目尻の皺が目に飛び込んできたのです。僕は箸の動きを止め、思わずじっと見つめます。つまんでいた1本の麺がスルリとお椀の中に戻りました。ポチャン・・。髪の毛やごみがついているとかではなさそうです。

 彼女は「何!?」と怪訝な目つきで僕を睨み返します。その醜く歪んだ表情が、より一層に皺を目立たせます。皺の谷は深く、グランドキャニオンの谷を思わせます。

 「し、皺が・・・。お前の肌にグランドキャニオンが・・・」

 皺という細部を発見し、僕は現実の世界へと叩き戻されました。夢をみようとする僕を叱りつける、神様の仕業なのかもしれません。確実に宇宙の時間は流れ、僕らは膨張の方向へ進んでいるようです。
 



 ※これは現実の話ではありません。何気ない細部を映像的に描いてみることで、どれだけ臨場感が生まれるのかを試してみました。日記のネタがないというのが本音。最近、長編の物語を書いてみたいと思っています。しかも、どうしようもなく細部をぎっしり書き込んだものを。たぶん、仕事で抽象的な文章ばかり書いているせいでしょう。巧妙に描かれた細部は、現実を生み出す魔力があります。「神は細部に宿りたもう」。
 
 追伸:以下は最近の出来事リスト。またもや新聞屋のおばちゃんが、「きれいな子がいるよ」と言ってお見合い話を持ちかけてきましたが・・・どうしたらいいでしょう?バスに乗ろうとしたとき、携帯電話を盗まれました。悔しい。それで電話番号変わりました。久しぶりに下痢をしました。何がいけなかったんだろう。行き着けの按摩屋が突然つぶれてしまいました。行き着けの果物屋靴屋になっていました。上海は変化が早すぎです。昆明時代の友人2人に会いました。オーストラリアへ働きに行く彼から「僕は1年後中国に戻ってきます。その時、よっしーさんは上海にいますか?」と聞かれました。