四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

ブラジルと銃とサッカー

 空高く蹴り上げたぼろぼろのサッカーボールを、弾丸で打ち抜く。


 そんなシーンからストーリーが始まるブラジルの映画を観ました。ちょうどW杯の日本対ブラジル戦の数日前のことです。

 会社の後輩から借りてきたDVDは、『CITY OF GOD』。リオデジャネイロの貧民街を舞台にした少年ギャングたちの半生を描いた映画です。W杯開催中とあって話題として関連付けたいところですが、残念ながらメインはサッカーの話ではありません。設定は1970年代前後でしょうか。ほぼ事実を基にしたストーリーらしく、少年ギャングたちが敵対する少年たちを銃で容赦なく殺しまくります。

 しかも、銃を発砲し、他人の命を奪いながら、その少年たちの顔は笑顔です。かなり生き生きとして、目が輝いちゃったりしています。殺すことが楽しくてしょうがない、殺しが僕らの生きる証だ!と言わんばかりの満面の笑みなのです。


 少年A:人を殺すのって簡単だよ。人って簡単に死んじゃうよ。ドキューン。バタン。ほらね。どう、お前も試しにやってみな?
 少年B:すげえ。かっこいい。それじゃ、ちょっとあいつが気に食わないから、殺してみるわ。僕にも銃を貸して?バーン。


 上記の会話は僕が作った例えですが、まるで鶏をひねり殺すようなこんなお気軽な感じで少年たちは少年たちを殺していきます。まだ憎しみに駆られて殺し合っていたほうが救わるな〜と思いながら、観ていました。


 きっと僕が一番怖いと感じた訳は、あの少年ギャングたちは決して頭の狂った特殊な少年たちではない、ということです。人間という生き物は、意外と簡単に環境に適応するし、その環境の中でのルールが絶対的な真実となってしまうもの。特にまだ未熟な少年たちにとってはなおさらのことです。自分の少年時代を振り返ってもそうですが、自分が生まれ育った街が世界のすべてなんです。

 だからもし僕が、あの貧民街に生まれ育ち、あの少年たちのひとりだったとしたら、きっと笑いながら銃で人を殺せたかもしれない。あの少年たちはきっと僕らのことなんだろう。と、そう考えさせられた衝撃的な映画でした。


 ちなみに。あるシーンの中で、少年たちは強盗を働いた直後、いかにも楽しそうにサッカーに興じていました。暴力とサッカーがすぐ隣り合わせにあって、ひとり一人の少年たちの人生の中にしっかりと組み込まれているかよう。そんな環境の中から、選ばれてプロ中のプロが出てくるブラジルという国。僕はあまりサッカーを知りませんが、この国に勝てるはずがないと思いました。


 僕の奄美時代の友人がブラジル・サンパウロからブログで発信しています。W杯ネタも。日本戦でブラジル人がどんな反応していたかも分かります。  
わん、ブラジルにいるっちょね http://d.hatena.ne.jp/patinha/
 

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