四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

青空の一点

 雲ひとつない青い空。

 その一点をみつめていると、青はどんどん濃くなり、そのうちに気のせいか黒くみえることがあります。青空の一点にわずかに発見できる青空の“黒さ”は、きっと宇宙の暗黒の黒さなんだろうと、僕は勝手に思っています。宇宙と地上との間に、汚れた空気や雲がないから、あまりに青く、そして黒いのです。

 真昼間でも、宇宙を感じられるほどに青い空がみられる場所は、僕が知っているのは奄美昆明、そして南米ペルーです。


 南米ペルーは20歳の頃、友人と2人で自転車に乗って旅をしました。全行程は3000キロ。約2ヶ月をかけてリマの瓦礫の中を、ナスカの砂漠の中を、クスコの山道をひたすら走りました。
 
 最終目的地は、アンデス山脈にあるマチュピチュ遺跡です。長い道のりを乗り越え、標高2400メートルの山すそにつくられた都市遺跡に立ってみると、そこが“空中都市”と呼ばれる理由がわかったような気がしました。

 青空だけが世界として広がっていました。インカの人々が天空や太陽に神をみたのも自然なこと。宇宙の中に、この遺跡だけが浮かび上がって存在しているかのような、特別で不思議な感覚でした。途中で赤痢にかかるなど、苦しい旅を無事に終えたという充実感がそう思わせたのかもしれません。
 
 
 いまでも青空をみつめていると、太陽の光のまぶしさに紛れて宇宙に吸い込まれていくような感覚にとらわれて現実感を失い、僕はふとある夏やある場所を想い出したりします。きっとマチュピチュ奄美昆明の青すぎる空は、どこかでつながっているのでしょう。


 遠く時空を超えてつながる青空の季節。もうすぐ夏、7月です。