いつもと違う道にある甘い香り
この世界でどんな香りが一番好きなのかと聞かれれば、金木犀(キンモクセイ)だと僕は答えていいのかもしれません。
きょうの夜、いつものように午後7時に仕事を終えた僕は、1週間前に新しく買ったばかりの自転車に乗ってスーパーへ向かいました。何気にいつもとは違う道を走ります。
もう部屋の冷蔵庫には食べ物がありません。毎朝、目覚ましのためにコーヒーといっしょに口にするチョコレートも切れてしまっています。あるのは、干からびた一本の細い葱だけ。
両サイドに庭園の広がる道を通り過ぎようとペダルの回転を速めた時、サッと甘く優しい香りが体を包みました。金木犀です。姿のみえない金木犀が放つ香りによって暗闇の風景が立体化するのが分かります。
「もうそんな季節になったのか」・・・香りという感覚を基準にした季節の体内時計が再び時を刻み始めます。1年前は、昆明で金木犀を嗅ぎました。2年前も昆明。3年前は信州。もっともっと前は奄美で嗅ぎました。
嗅覚は記憶と直結しているのでしょうか。いつもと違う道で見つけた甘い香りは、ささやかな季節のプレゼントのようなものです。ちなみに、日本にもある金木犀ですが、もともとの原産地はここ中国の桂林だそうです。
昨日まで、信州の幼馴染2人が上海まで遊びに来てくれていました。その一人は初の海外体験。「辛くてもダイジョウブ」だと豪語するから、辛さで有名な四川料理の店に連れていきましたが、舌がビリビリと麻痺するほどの辛さに、「この刺激こそが中国だ!」と叫んで中国の真実を体で知っていただいたようでした。中国語ではまさしく、麻痺するような辛さのことを「麻辣(mala)」と言います。翌日はおけつの○が痛かったそうです。