四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

沈黙という言葉

 何かをあなたに伝えようとして、シーとやさしく唇を押さえられる。


 まだ言葉にしないで欲しいと、沈黙という言葉で教えてくれる。
 たったいま僕の唇の筋肉まで脳から命令が来て、空気の振動に形を変えようとした気持ちをもっと大切にしてほしい。軽はずみに言葉にしたら、きっと気持ちの方が薄れてしまうもの。

 
 メディアが発達したいま、人々はあまりにもたくさんの言葉をむやみに発しすぎているのではないか。沈黙という言葉の意味を忘れているのかもしれない、とさえ思う。
 
 語るべき言葉を心の中に持ちながら、むやみに発しない友人たちの姿勢を、僕は尊敬すらしている。



 上海に来てもうすぐで1年になる。秋、冬、夏、そしてまた秋と季節が一巡りして、僕の中に、中国や上海について語るべき言葉が少しでも蓄積されているのだろうかと、不安になる。いやむしろ、上海という環境に慣れて、語るべき言葉を失くしているのかもしれない。


 大切な言葉は軽はずみに発せられた言葉や、無数なネット上にはなく、僕の唇を押さえたあなたの人差し指の中にあるのかもしれない。




 ※一週間前、パソコンが熱を持って壊れてしまいました。買ってから3年ほどでもうオジャン。このブログは、久々に近所のネットバーで書いています。パソコンの修理代は3万円もかかるということ。日本への飛行機代にも匹敵します。パソコンがない質素な生活もいいものと実感しているところで、いまは修理するかどうかは保留中です。