河童の川流れ
「隊長!大変であります。かっ、かっ、河童が流れてきました!」隊員たちの尋常でない声が、川面の波を振るわせた。僕は急いでその方向へ目を向け、まだ遠くにあったその物体を凝視した。
もう10年以上も昔のことだ。インドネシアはカリマンタン島。深いジャングルの中を全長1000キロメートルにわたって蛇行して流れるカプアス川という大河の中を、僕ら探検隊6人は自作のイカダに乗って旅をしていた(実話)。
上流から流れてきたその不気味な物体は、まぎれもない生命体だった。しかし、もう息絶えているようで、河の流れのままにプカプカと浮かんでいるだけだった。
大きさは人間の2歳児ぐらいか。全身は茶色の毛で覆われ、仰向けになった顔面にはくちばしのような突起があった。白い腹が水面から出ている。まるで河童ではないか。
僕らはその物体に近づき捕らえようと、パドルで舵をとってみたが、6畳ほどある巨大な木製イカダはそうは簡単には方向を変えることはできなかった。
死んだ河童は腹をみせたまま、僕らのイカダを追い抜き、そして下流へと流れていってしまったのだ。
河を本拠地とする河童ですら無残に流してしまう大河。僕ら探検隊はその大自然の脅威と神秘に思いを寄せた・・・などとアホなことを書いているブログではなかったはずですが、昔の仲間たちからの要望があってあえて書いてみました。「河童の川流れ」の話でした。
実際は、あの死んだ動物はカリマンタン島に自然のまま生息するオラウータンではなかったかと思っています。姿形はとても人間に似ているしね。探検部に所属していた学生時代の良い思い出です。探検部時代の仲間たちよ、みんな元気か。まだアホやってるか。たまにはこんなブログでも。