ルカ
僕の愛犬、ルカが死んだ。12歳。犬としてはもう高齢だった。
15日夕方に長野の実家から中国の僕の携帯に電話がかかってきて知った。
僕が帰国した4月初旬。少しやせたルカの体が気になっていたが、僕が中国に戻ってからはほとんどえさを食べなくなってしまっていたという。
病院につれていったが原因がはっきりしなかった。
死の数日前からペット病院に入院し点滴を受けていた。一時は回復したかにみえたが、力尽きた。
ルカは、奄美時代からの友人だった。名瀬市内(現・奄美市)の雑貨屋で3000円だかで購入した雑種。女の子らしくとてもきれいな顔をしていた。
沖永良部島の海岸で、潮が引いた珊瑚棚の上をいっしょに歩いたのを覚えている。白い砂浜を僕といっしょにものすごい勢いで駆けずり回った。その時からルカは水浴びが大好きになった。
僕が中国にわたってから5年。その間は年に1度会えるかどうか。
でも、僕が実家の玄関に戻ると、体いっぱいに喜びを表現して、僕の顔を一生懸命になめてくれた。
5年間は両親が世話してくれていた。
ルカのために日本に帰らなければなんて思うこともあったが、僕は中国での仕事を、中国での生活を優先した。
中国での仕事をものにしないと、僕は帰れないと思っているからだ。いまもそう。
ごめんね、ルカ。でも、ありがとう。12年間は僕の大切な時間でした。本当にありがとう。
ルカは、実家の庭の隅に埋葬された。
翌朝はいつもより早く目覚めた。
大切なものを亡くしたという思い。
奄美の海岸での水浴び、冬の雪の中での駆けっこ、春の山菜狩り。奄美からの日々を振り返った。
スヤスヤと眠る彼女の横顔をみていると、こんな日常も宝物のような時間のように思えて、ぎゅっと強く手を握り締めた。