四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

日本落城

城が落ちたーー。


 そんなイメージがしっくりくる選挙だったようです。今朝の日本経済新聞は社会面で、自民党の歴史的大敗を「落城」と見出しを打っていました。私はショッキングな見出しに釘付けとなり、仕事が終わった後、ラーメンをすすりながら読みふけりました。中国にいると日本の雰囲気というのがつかみにくいものです。

 5年以上も昔の話になりすが、地方新聞社の新聞記者時代のことを思い出しました。
 選挙事務所は、戦国時代の陣地のようなものです。この中に足を踏み入れてみれば、人に聞かなくてもこの候補は勝つのか負けるのか、だいたいの情勢がつかめることがあります。
   
 見る箇所は、壁に掲げられた応援人の署名が多いか少ないか。人の出入りが多いか少ないか。そして、事務所の雰囲気は明るいか暗いか。これを対立候補の事務所と比べてみると一目瞭然です。負ける可能性が高い候補の事務所は静かで、意外と落ち着いている。なぜか僕は鹿児島時代も、長野時代もそんな事務所の取材をすることが少なくありませんでした。

 中国にいて、日本の特徴として感じるのは、その静けさです。東京ですら、静けさを感じます。
 半年に1度ほど日本に帰国すると感じるのは、街の活気のなさ、若者の少なさ。そして驚くほどの静けさです。

 中国と違って騒音もなく、車も多くなく、空気は澄み、森の緑が目にしみます。僕は日本のそんな静けさが好きです。ぎらぎらしているより、なんだか他人や世界をよく見通しているような気がして。

 日本はかつてのようには成長できなくなりました。若者の割合が減り、高齢者が増え、おのずと市場は縮小するばかりです。戦後、日本のものづくりは徹底的に無駄をなくして効率化し、もうこれ以上は無理ですよというぐらいに生産性を上げてきました。それこそが成長力の源泉でした。

 ですが、急速に中国がこれに追いつき、追い抜こうとしています。低い賃金が支える低コスト構造にプラスして、日本に肩を並べる技術力をつけようとしています。つい5〜6年前まで電池をつくっていた専門メーカーが、リチウムイオン電池をバッテリーとして搭載した純電気自動車を動かし、量産しようとしています。世界の大手自動車メーカーになろうともくろんでいます。
 いずれ多くの分野のものづくりで、いずれ日本は中国に勝てなくなるでしょう。多くの製造業が淘汰され、業界の再編が余儀なくされるでしょう。
     
  では、日本は何で食べていけばいいのでしょうか?

     医療福祉?サービス産業?農業?

  いや、もやは成熟した日本は成長などしなくてもいいのでしょうか?静かな日本のままでいいのでしょうか?


  
  僕には、この先の道筋がまだみえません。ただ、若者たちが元気でいられる社会環境、ビジネス環境をつくっていくことが大切のような気がしています。がんじがらめになった法規制やルールを少し緩める。もっと法の抜け道を与える。
 日本に必要なのは「自由」さではないか。
 
  固定概念や社会通念を超えた自由な発想が許される社会づくりではないかと思います。


 
    
  いま、僕が心配なのは日本の静けさ。まるで負ける前触れのある選挙事務所のようなその静けさです。自民党にとどまらず、日本そのものが落城しそうな静けさです。