四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

日本の「原発ゼロ」が、中国進出を加速する

民主党野田佳彦首相は9月、2030年代までに国内の原子力発電所をゼロにする考えを示した。福島第一原子力発電所の事故以来、反原発を一途に訴えていた一部国民から拍手喝采を受ける。だがその一方で、日本の行く末を懸念するのは産業界。原発ゼロで電気料金が高騰し、安定的な電力供給システムが失われれば、日本からさらに中国や東南アジアなどへものづくりが逃避していく可能性があるからだ。

 

現在の日本の原発依存度は2030%とされる。この原発を廃止し、その分の代替エネルギーとして火力発電のほか、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを普及させる方針だが、再生可能エネルギーは安定的な電力供給能力に乏しい。太陽光エネルギーは二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しないため、いかにも“魅力的”だが、日照時間は1日のうち半分で、雨や曇りの日にはほとんど発電できなくなる。
原発ゼロ政策の発表を受け、深せん市内の日系企業関係者は「7~8年前の中国のように、日本の生産現場でも毎週○曜日は停電日なんてことにならなければいいが」と懸念する。

日系の加工貿易の工場が集積している東莞市などでは、よく電力需給が逼迫し、停電日は生産ができなくなることも茶飯事だった。電気が安定供給されないリスクは、家庭以上に産業界には致命的だ。

 

■電気料金が2倍に高騰

さらに懸念されているのは電気料金の高騰だ。

風力や太陽光発電などの再生可能エネルギーの発電コストは高い。電気代が上昇し、標準家庭の光熱費は現在の月1万7,000円が3万2,000円に跳ね上がると政府は試算している。既に福島の事故以来、原発を代替する火力発電の燃料費は年3兆円以上も余計にかかっているという。

電気を大量に使用してものづくりをする工場のコストも2倍近くに跳ね上がるとみられており、既に高コスト体質で利益を減らしていた日本のものづくりは今後、完全に立ち行かなくなる可能性が高い。中国などへの生産移転をさらに加速することになるだろう。

■「原発大国」になる中国

日本と対極を行くのが中国だ。

中国は今後30年間で原発を現在の75から125基に拡大する計画。安く、安定的に供給ができ、CO2の排出が少ないエネルギー源として原発を今後も推進する方針。まさに世界の原発大国になろうとしているのだ。

ものづくりにとって生命線となる電力供給が不安定化する日本から、原発大国になる中国に日本の工場の移転が今以上に進めば、日本の雇用はどんどん失われていく可能性も高まる。エネルギー問題で迷走を続ける日本の行く末は決して明るくない。日本のものづくりを守るためにも、エネルギー政策を議論していく必要がある。