四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

「パンダを殺した」、日本人をミスリードするマスゴミ

■「パンダを殺した」、日本人をミスリードするマスゴミ

~「国益」と叫んで国益損なう

 

「日本人がパンダを殺した」――。上野動物園で待望のパンダの赤ちゃんが死んだ翌日、あたかも大勢の中国人が日本人を非難しているかのような見出しが踊った。日中友好を象徴するパンダなのにもかかわらず「殺した」と日本人に暴言を吐く中国人。そんな印象を植え付ける記事だ。これを読んだある日本人読者は「中国人はなんて情のない人間たちだろう」と、逆に中国を非難したくなったという。

中国のインターネット事情に詳しいあるライターは「実際はネット上で日中関係の話題への書き込みをするのは思想が偏っている若者が多い」と指摘。書き込みをしない大多数の中国人の意見はほとんどマスコミで紹介されず、書き込みをする「偏った過激な人々」の意見が「中国人の言葉」として紹介される。これはパンダに限らず、マスコミの常套手段。「中国を知らない人は、あたかも中国人の多くが日本人を非難しているように受け取ってしまうだろう」。

◇時流に流される記事

ただ、ある大手マスコミ関係者も「私たちも決して中国人が反日的な人ばかりだとは思っていないし、むしろその逆。デスクとケンカもするが、結局単なるサラリーマンにしかすぎない記者は本社の方針を汲んだ記事を書くしかない」と打ち明ける。中国や中国人を褒めるような記事は価値がないし、読者からも求められていないからだと言う。

現場の一部記者は不満をかかえながらも、毎日にように日中間の対立ばかりに焦点を当てた記事を量産し、真実を知らない日本の大多数の読者たちをミスリードしつづけているのだ。

◇丹羽大使報道への違和感

そんな日本のマスコミの報道の仕方に「違和感がある」と疑問を呈するのは、中国にいるある日本人駐在員だ。

「丹羽大使の尖閣諸島発言がマスコミの格好の餌食とされてしまったが、中国を知る日本人駐在員の中では、丹羽大使と同じようなことを思っていた人が多いのではないか。日本や日本人が思う以上に中国はしたたか。石原都知事の東京都による購入計画に日中間の関係悪化を恐れ、むしろ利用されてしまうと考えるのは当然だ」という。丹羽大使のそんな微妙なニュアンスが伝わらないままに、中国寄りであるかのような報道が一人歩きしてしまったのではないかと推測する。

「ただ大使としては正直しきすぎたのかもしれませんが」と付け加え、こうした現場で感じる中国認識とマスコミの中国報道に感じる違和感は、日本の本社と中国にいる日本人駐在員の中国認識の食い違いと本質は同じところにある。「『国益』と叫んで対立を生み、国益を失わせている現実に気づかない日本人。結局は中国に来て、中国人と肌と肌でぶつかり合ってみないと分からないということだろうね」と駐在員は笑った。