四十雀の囀り日記

路上をゆるりと歩いたり、時に疾走したり。2004年から中国で暮らし、16年秋に13年ぶりに帰国しました。

内向き姿勢が日本をつぶす!?~頑なに中国を拒絶する人々

 

 

「長引くデフレと景気低迷で、日本人の内向き姿勢が一層進んでいる」と、日本国内のある医療業界関係者は嘆く。高齢化や1人当たり700万円を超えるとされる膨大な借金、ますます先細る社会保障の問題など、内側からむしばまれる日本。新たな活路を見いだすため、本来なら外側にも目を開いていかなければならないはずが、逆に内に向かってしまうのは、島国で育まれた日本人の性(さが)なのかもしれない。

日本人の内向き姿勢が顕著となっている例は、中国人を含む外国人向け医療ツーリズムだという。日本政府が「新成長戦略」の中で、重要施策のひとつとして打ち出したが、地方自治体でこれ推進するところは少ない。「原因は中央と地方でねじれた政治的な対立より、日本人の内向き、排他的な姿勢そのものにある」と上記医療関係者は指摘する。

 

◇一枚岩となれない裏事情

 ある日本の自治体は、中国人の観光客受け入れは積極化している。ところが、こと外国人向け医療ツーリズムになると、一枚岩ではないのだ。 昨年の夏、北京市内で地元マスコミや医療関係者向けに「医療ツーリズム」の発表会を開いたのは、西日本のある県の観光協会だった。ところが、その席に県庁の人間はひとりも来ていないという異常さが際立った。関係者は「いずれ県全体としても推進できるように努力したい」と話すが、県内で調整が進んでいない苦しい事情をうかがわせた。

 では、なぜ県全体で推進できないのか?

その構図はこうだ。「医療ツーリズム」は民主党政権が推進する。一方、同県の知事は自民党。議会も自民党議員が多くを占めている。中央の政策と地方の政策にねじれが生じているのだ。

それだけではない。この自民党議員の大きな支持母体のひとつとなっているのが、地元の医師会。医師会は地元の医療に大きな発言力を持つだけでなく、地元経済の権益構造に力を持っているのだ。

◇「感染症が拡大」と医師会

社団法人日本医師会は昨年1月、ウェブサイト上で政府が閣議決定した医療ツーリズムについて、47都道府県の医師会を対象に意向を聞いた調査結果を公表している。賛成している都道府県はゼロで、明確に反対しているのは28都道府県に上ったことを明らかにした。

 中部地方のある県医師会は経済対策の一環として医療を産業として捉え、医療機関医療ツーリズムを公認していくことは、営利企業の参入の容認、混合診療全面解禁に繋がる可能性が大きいので、断じて容認できない。外国からの患者の安易な受け入れにより、新たな感染症や多剤耐性菌の拡大のおそれがある」と反対する姿勢を明確にしている。

 ある県では、県の政策として医療ツーリズムを推進できないものの、医師会の権益構造から離れた関係にある県観光協会や開業医などが中心となって医療ツーリズムを推進しているのが現状なのだ。

 冒頭の医療関係者は「医師不足や財源不足が懸念される地方医療だからこそ、外国人の医療ツーリズムを受け入れて資金を補充し、地方医療の再生を図る道もあるはずなのに、外国人、特に中国人を毛嫌いしているようにもみえる」という。医療ツーリズムの可能性に注目しているという日中間の観光関係者も、「政策のねじれ状態が解消されないと、医療ツーリズムの大きな発展は難しいだろう」と嘆く。