燕京の雪
ギシギシと自分の足音をかみしめるように白くなった北京の道を歩く。
雪は街の雑音を消し去ってくれるのだろう。
2000万人が暮らすとされる喧噪のこの街も、
雪が降り積もった早朝は古の都の静けさを取り戻す。
時空を超え、歴史に消えていった有象無象の人々の雑念、怨念さえも細雪に結晶して地面に降り積もっているかのよう。
ただ1点、赤黒く染まった雪が純白の大地を切り裂いていた。
人の血か、怪我をした動物のものか、それともただの私の錯覚なのか。
人々の無数の足跡は、その鮮明な色を避けて通り過ぎていったのが分かる。
どこまでも貪欲な狩人たちの痕跡もそっと指で振るい落とせる雪の日。
赤に染まった雪だけが、凍える北京の今を象徴しているかのようだった。
1年ぶりに日記を記してみる。